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FEATURE / MOVEMENT

世界に広がるSAKEマーケット 広島9蔵がパリで発信!  | The Cuisine Press WEB料理通信

Jan 01, 1970


text by Yukino Kano / *photographs by Fabymages、広島県
取材協力-広島県



「日本酒を世界に!」。2014年に輸出額が過去最高の115億円を記録するなど(財務省貿易統計)、ここ数年来、日本酒の輸出を巡る動きが盛んだ。需要開拓と付加価値の創出を目指した支援プロジェクトが、政府単位のみならず、県、個人、企業レベルでも活性化している。
広島県が照準を定めたのは「食もファッションも、世界中に影響力を持つ」フランス。2年ほど前から、在仏日本大使館やイベントスペースなどを会場に、広島の日本酒や食をPRするイベントを展開している。
2015年10月30日~11月3日にパリで行なわれた日本酒イベントをリポートして見えてきたのは、現地に根を張るSAKEの姿だ。

SAKE文化の発信拠点は今、パリ!







2015年10月末~11月初旬。パリではこの期間、多くの日本酒関係者が集い、SAKEイベントが多数開催された。
その目玉のひとつが10月31日~11月1日に開かれた「第2回 サロン・デュ・サケ」だ。 主催者はフランス初「酒サムライ」の称号を持ち、日本酒の教育機関の主宰を務めるシルヴァン・ユエ氏。300銘柄が出品した試飲会をはじめ、カンファレンス、アトリエが2日間にわたって行われ、広島県からも、県の支援を得て、9蔵が試飲会とコンフェレンスに参加した。

主催元によれば来場者はフランス国内外問わず、周辺国から2,700人を超え、第1回開催時(2013年)と比べて2倍の数字になったという。その6割以上が食業界のプロで、中でも、今まで日本酒にさほど興味を示さなかったカヴィスト(酒屋)たちの姿が増えたことは興味深い。家で日本酒を楽しみたいというフランス人が増え、そのニーズが供給元であるカヴィストに伝わった結果と言えよう。

講師やパネリストには、日本人だけでなく、フランスのトップ料理人やパティシエらも多く登場し、フランス人が理解し感じたSAKEがワールドワイドな参加者に向けて語られる、欧米の日本酒シーンを牽引する一大イベントとなった。


続く11月2日、「ル・コルドン・ブルー」にて行なわれたのが、ル・コルドン・ブルー、広島の9蔵、および広島県の共催による日本酒レクチャー。前述のイベント「サロン・デュ・サケ」の主宰、シルヴァン・ユエ氏を講師に迎え、ソムリエコースに籍を置く、世界から集まった生徒に向けて、日本酒の歴史、醸造法などの講義に加え、広島の9蔵の日本酒とフランス料理のマッチングが披露された。



華やかな「GINJO」とクラシックフレンチの相性は如何に?





「日本酒において大切なのは“水、米、技”」とシルヴァン。広島の日本酒の特長を「リッチな口当たりと風味」と捉え、その魅力を次のように説く。広島では昔から醸造技術が発達し、繊細で華やかな吟醸酒のお膝元と言われていること。この地の軟水が、やわらかで芳醇な旨口をつくり出すこと。

「同じリッチ感を持つフランス料理とも非常に合わせやすい」と、提供されたのは、チーズ、テリーヌ、サーモンリエット、ムール貝、鴨のマグレといった、昔から、レストランだけでなく家でも愛されてきたフランス料理だ。


左:「賀茂鶴 純米吟醸 一滴入魂」(賀茂鶴酒造)×カマンベールチーズとクルトン
フレッシュでリンゴや桃などのフルーツ香に加え、骨格の太さも併せ持つ、芳醇なタイプ。チーズともバランスよく共鳴。特にカマンベールチーズとは抜群の相性。クルトンなどシリアルとの相性のよさも見せた。

中央:「本洲一 無濾過純米吟醸」(梅田酒造場)×グジェール
フルーティな香りが印象的な「本洲一」はアタックが強く、すっきりと爽やかな味わい。相性を考え、グジェールにはコクのあるチーズを練り込んで、旨味のある味わいに仕上げてある。

右:「醉心特選醉心純米吟醸」(株式会社醉心山根本店)×酒粕バゲット&テリーヌ・ド・カンパーニュ
軟水らしい、柔らかな印象のアロマがたっぷり感じられる「醉心」。肉の旨味が凝縮したテリーヌと合わせると、その旨味がよりふくよかに。見事な共鳴を見せた。酒粕入りバゲットを添えて。


左:「千福 神力生もと純米無濾過原酒85」(三宅本店)×サーモンリエット、アネットとピンク胡椒添え
バナナやメロンが香る力強い味わいの1本。強めに塩をした、脂がのった力強いサーモンと互いを引き立てあった。サーモンには甘味が、酒には強さにまろやかさが加わるイメージ。

中央:「白鴻四段仕込み純米酒 赤ラベル」(盛川酒造)×ムール・マリニエール
通常の仕込みに、麹甘酒を加えてさらに仕込み、甘味を残した旨口タイプ。風味の強い貝とエシャロットの奥深い味わいにぴったり。貝には軽い辛口を、と思いがちだが、この濃さの方が、より合う。

右:「華鳩 貴醸酒 8年貯蔵」(榎酒造)×鴨マグレの燻製とドライアプリコット
日本酒を仕込み水に使って醸す、芳醇でリッチな貴醸酒は、風味の強い鴨胸肉の燻製も鷹揚に包み込む。ポルト酒や貴腐ワインに通じる、フルーツの甘味を想起させる凝縮感が、アプリコットともよい相性を見せた。


左:「賀茂泉 朱泉本仕込 純米吟醸」(賀茂泉酒造)×鴨砂肝のコンフィ
米の旨味を感じるまろやかなタイプ。ぬる燗で供して旨味を立たせた。鴨の脂でコンフィにした鴨の砂肝は、濃密な旨味と甘味、風味。芳醇な日本酒との相性は官能的。今回最高のマリアージュ。参加蔵元もうっとり。

中央:「龍勢 黒ラベル 純米大吟醸」(藤井酒造)×アボカド、ヴィネグレットとワサビの風味
大吟醸だが、香りは控えめで洗練された印象。余韻は長い。合わせるのは、あえて熟す前のアボカドを選び、ヴィネガー&ワサビで爽快に仕上げた1品。「爽やかさ」を切り口に、酒と結んだ。

右:「一代藍弥山 大吟醸」(中国醸造)×フロマージュ・ブラン、ハチミツ添え
フローラルでフルーティー、チャーミングで華やかな大吟醸。嗅覚と味覚を喜ばせつつ、後口はすっきり。フロマージュ・ブランのクリーミーで優しい酸味、ハチミツの甘やかな香りと抜群の相性。





「サロン・デュ・サケ2016」も開催決定!





シルヴァンをはじめ、現地のSAKE関係者は「国、県、個人など様々なレベルでの恒常的なアプローチが大切」と繰り返す。「数年来、日本酒への興味と需要は非常に高くなったが、フランスのSAKE市場はまだまだ小さい」とシルヴァン。単発的なイベントではなく継続して様々なプロモーションを行なうことが大切だと。広島県では、レストランへ積極的な営業もかけるなど、ワンショットで終わらない取り組みを継続して行ない、パリにおける知名度を高めつつある。

「サロン・デュ・サケ」もすでに2016年度の開催が決定。「個々の蔵元、県単位での長期的プロモーションも増えた。これらの成功を受けて、より活発になることを期待したいし、我々も力は惜しまない」とシルヴァン。フランス人と手を携えながら様々な形で日本酒の魅力を広めた時、この国にどんな日本酒文化が花開くのか、今から楽しみだ。



*一部の写真についての提供元:
http://www.cordonbleu.edu/news/sake-seminar-for-students/fr









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