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JOURNAL / JAPAN

日本[福島]
【ふくしまプライド。ツーリズム】

福島県中通り 食文化の担い手たちの思い

Feb 08, 2021

text by Mieko Sueyoshi / photographs by Hiyori Ikai

福島には浜通り、中通り、会津と三つの地域それぞれに、個性豊かな3つの地域があり、特徴ある食文化があります。「ふくしまプライド。」とは、ふくしまの生産者たちが、手間を惜しまず、たっぷりと愛情を注いだ自慢の逸品の総称です。中通りに位置する岳温泉「陽日の郷あづま館」の総料理長藤澤尚隆さんは福岡県出身。8年前「陽日の郷あづま館」に赴任して以来、自然豊かで変化に富んだ福島の食文化に日々刺激を受けています。「旅館で使う米も野菜も福島産。特に大根、人参、牛蒡など根菜類の味がとても濃い。見たことない茸もあって驚きや発見がいっぱいです」。そう話す藤澤さんと一緒に、生産者さんを訪ねました。

川俣シャモ (川俣シャモ専門店 地鶏屋本舗)

福島三大ブランド鶏のひとつ川俣シャモは、かつて絹織物の町として栄えた川俣町で、旦那衆が好んだ“闘鶏”用に育てられていたシャモを食肉用に改良した地鶏です。2020年2月には食品安全や環境保全などに配慮した取り組みが評価され、川俣シャモ生産者で作る「川俣シャモ振興会」が肉養鶏としては、全国で初めてJGAP(農業生産工程管理の国内認証)団体認証を取得しました。川俣シャモの特徴は弾力のある肉質と深みのあるコク、噛めば噛むほどに口の中に広がる旨味です。「川俣シャモは良い出汁が出るので鍋料理にします」と藤澤さん。

川俣シャモは、レストラン需要が主の高級地鶏ですが、川俣町内には親子丼やシャモ鍋として提供する飲食店があります。春と夏に開催される「川俣町シャモ祭り」ではシャモの丸焼きなど地元ならでは料理が振舞われ、地元の人や旅人も一緒に、シャモのおいしさを知る良い機会となっています。

川俣町内の肥育農家 菅野正彦さんを訪ねました。澄んだ空気がおいしい静かな里山の一角。3棟ある開放鶏舎では約900羽のヒナが1平方メートルあたり6~7羽という広々とした環境で育てられています。

「気性の荒いシャモは大きな音を聞くと驚いて暴れたり喧嘩したりします。すると肉が硬くなってしまうので、極力ストレスを与えないよう育てています」と菅野さん。鶏舎で出た鶏糞は堆肥に混ぜて大根などの野菜作りに役立てています。

川俣町農業振興公社の孵化場では、鶏舎に近づくとヒヨコたちの元気な声が聞こえてきます。「ヒヨコは寒さに弱いので、鶏舎内は床暖房、室温24℃を保ちます」

そう話す管理者の橋本健太さんが持ってきてくれた、生みたての卵の濃厚な味にびっくり。川俣シャモの力強さを感じました。

 

◎川俣シャモ専門店 地鶏屋本舗(川俣町農業振興公社)
https://www.kawamata-shamo.com/

◎川俣シャモレストラン「Shamall(シャモール)」
福島県伊達郡川俣町大字鶴沢字東13-1
道の駅川俣オアシスinシルクロード内
☎024(565)5250

 

“安心安全”を徹底する なめこ栽培 (ハッピーファーム)

使用するオガ粉などの履歴を徹底的に調べて、安心安全な資材でなめこを周年栽培する郡山市の安田潤一さん。栽培が終わった菌床を堆肥にして、味が良いと評判の冬人参などの野菜、米を栽培。ハウスの中で青パパイヤやイチジク、ぶどうも栽培。市民を招いた農業体験も企画しています。きのこ栽培を始めた50年ほど前は、長野県で仕入れた種菌を使い、冬場だけの栽培でしたが、安田さんの就農を機に自宅横に菌舎を作り、自家培養した種菌を使って周年栽培を開始。

「一番重要なのは菌床つくりです。うちの菌床は落葉樹のオガ粉にふすま、米ぬか、乾燥おから、乾燥ビール酵母、“ミネラルフジ海洋古代化石”などを混ぜて地下水で練り、容器に詰めて殺菌しています」。保田さんの安心安全への挑戦は、さらに続きます。自家製の栄養剤で栽培する方法を模索。6年の歳月をかけて独自の配合を完成させました。

菌舎に入ると、菌床の瓶が整然と並んだ部屋がいくつも並んでいます。温度・湿度管理に神経を使いながら十分に育ったなめこを収穫、選別して出荷します。「なめこは栽培終了まで、トータルで100日かかります。収穫後に出てくる2回目のなめこも出荷しています。こっちはぬめりが少なくてシャキシャキした食感で、これが好きだって人もいるんです」。“作る自分たちが笑顔。食べた方も笑顔。”のポリシーどおり、安田さんの笑顔が印象的でした。

 

◎ハッピーファーム
http://www.happyfarm1965.com/

 

生酛造り 大七 (大七酒造株式会社)

50以上の酒蔵がある福島では、酒造りの方法もさまざま。二本松にある創業1752年の大七酒造は、速醸酛が広まった明治期以降も生酛造りを貫き、現在も全商品が生酛造りです。「福島の酒を支えるのは米、水、冷涼な気候の三拍子揃った好条件と言われますが、一番大きいのは人。江戸時代から殿様が酒造りを推奨し、酒蔵ごとに代々技術を受け継いでいます」と十代目当主の太田英晴さんは語ります。約20年前の新社屋建設にあたり、創業以来270年間使い続けている「水脈」と、蔵に棲みついている「菌」を守ることに最も神経を使ったと話します。「地質調査をしたら仕込み水に使う中井戸の水脈はとても浅い。そこで水脈を傷つけないために大工事となりましたが、おかげで震災時に、びくともしませんでした」

震災当日、杜氏が蔵を救います。大きな地震で水系が変わらないように、「井戸から水をくみ上げ続けろ」と指示。大七酒造への「水の道」が守られたおかげで、蔵の宝である仕込み水は今も変わらず、ここにあります。

蔵では元の仕込み蔵がそのままの形で残され、廊下の天井にも元の蔵にあった木材が使われています。「生酛造りの酒は料理との相性が良いので、コースに沿って吟醸から純米、古酒、梅酒との見分ける楽しみがあります。酒だけなら東京のデパートでも買えますが、土地の料理あっての酒の旨さをぜひ、味わってほしいですね」と太田さん。傍らで藤澤さんも大きく頷いていました。

 

◎大七酒造株式会社
https://www.daishichi.com/

 

岳温泉「陽日の郷(ゆいのさと) あづま館」

安達太良(あだたら)高原にある岳温泉(だけおんせん)は、福島市や郡山市から車で30分という立地から福島県内利用者が5割を占める温泉地です。「陽日の郷 あづま館」は東日本大震災による改築を機にビュッフェレストラン「ゆいの一楽」をオープン。幅広い世代が楽しめる料理を提供しています。

「浜通りと会津のちょうど真ん中にある岳温泉は、どの地域の料理も楽しめるのが強み」と話す料理長の藤澤さん。いま力を入れているのは地元の酒造から分けてもらう酒粕や麹を使った料理を前面に打ち出した「温泉で美活」プランです。

「岳温泉のお湯は肌の新陳代謝を促す天然保湿成分が多く含まれる美人の湯。温泉プラス発酵食で体の外と内から健康になれる食事を提案しています」。高原の澄んだ空気と温泉と発酵食。この三つが揃えば、コロナ禍で求められる免疫力アップも期待できますね。

 

◎岳温泉「陽日の郷(ゆいのさと)あづま館」
福島県二本松市岳温泉1-5
☎0243-24-2211
http://www.azumakan.com/

 


◎ふくしまプライド。
https://fukushima-pride.com/

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