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JOURNAL / JAPAN

日本[福島] 【ふくしまプライド。ツーリズム】

土地の風土が作る味

Mar 18, 2021

「川俣町ふるさと大使」を務める田代シェフ

久しぶりに故郷福島を訪ねた東京・青山「ラ・ブランシュ」の田代和久オーナーシェフ。会津で出会った生産者や地域の食を盛り上げる人々と共に、その土地でしか味わえない食について語り合いました。


「川俣町ふるさと大使」を務める田代シェフ

田代: 生産者さんを巡って感じるのは一言でいうと“テロワール”。土地の風土が作り出す味には、魂を生き延びさせるような温かいものを感じます。


人と種をつなぐ会津伝統野菜 会長の長谷川純一さん。在来種の野菜を育て、未来に伝える活動を続ける。

長谷川:この土地の気候風土に合ったから何百年も栽培され続けてきたのが在来種の野菜なのですが、生産性が悪いなどの理由で消えていく現状に疑問を感じて、在来種の野菜を育て、未来に伝える活動をしています。この宇津野蕪(うつのかぶ)は、喜多方市熱塩加納町の94歳になる農業指導員さんから「今は育てる人がいなくなった宇津野蕪の種を守ってほしい」と、譲り受けました。それを私が会津農林高等学校へ持ち込み、栽培に取り組んでもらったものです。


手前が宇津野蕪


特定非営利活動法人 素材広場の横田純子理事長。福島県内で地産地消に取り組む宿と食材の作り手をつなぐ活動を行う。

横田:私は会津の素材を活かした地産地消の企画を行い、受発注までのお手伝いをしています。料理人の考えと農家の思いを具現化するのが「素材広場」の役割です。スムーズに事が運ぶように、料理人と農家の間に入ります。また料理人の畑訪問や、生産者が自分の野菜を使った料理を食べる機会を増やしたいと思っています。


特定非営利活動法人 素材広場の小林篤史さん

小林:僕の家は農家ではありませんが、会津農林高校で会津伝統野菜に取り組む先輩たちに出会い、皆誇りをもって農業をしていて「魂がある」と思いました。今は地元の野菜が誰に使われているのか、農業は経営として成り立つのか、を学んでいるところです。


会津東山温泉 原瀧・今昔亭、レイクビュー猪苗代荘の統括総料理長を務める根本成史さん

根本:農家を訪ね、生産現場を知ると、最後まで使い切りたい、葉っぱ一つも捨てたくないという思いがより一層強くなります。

田代:料理人にとっては生産者と会話して見えてくるものは大きいし、料理へのモチベーションも上がりますね。


会津東山温泉 原瀧・今昔亭 総支配人の平賀茂美さん

平賀:今はお客様も地元食材への関心が高くなっていますので、旅館としても野菜の来歴や栽培の様子を伝えたいと考えています。

―安心安全でおいしいものを作りたい農家と最高においしくしたい料理人とが同じ方向を向いていれば、最高のおいしいを提供できますね。

平賀:冬場は雪下の野菜が甘くておいしい。雪の多い会津ならではです。

長谷川:雪はゼロ℃からプラスマイナス1℃のチルド状態のため、野菜は凍らず、糖度が上がるんです。



忠藤農業株式会社 代表取締役社長の佐藤忠保さん。ずっしりと重く、雪の重さに耐えられる固い品種の「とろねぎ」を育てる。

佐藤:雪下キャベツは、風が当たらないから芯は外気より温かく、適度に水分があるから甘くなる。僕が作るとろねぎも雪に当てます。会津盆地だからこそ作れる野菜です。

長谷川:会津伝統野菜の余蒔(よまき)きゅうりは、人気のない野菜でした。でも、本来のきゅうりの味を知ってもらいたいと、給食に使ってもらうように学校に交渉し採用されました。きゅうり嫌いな子も食べたとのことで、それ以来給食で使ってもらっています。

長谷川:会津伝統野菜を子どもたちに伝え繋ぐ、我々の挑戦はまだまだ続きます。小学校の花壇を畑に変えました。子供たちと一緒に、種まきから野菜を育てています。コロナ禍で学校が休みでも、子供たちは学校に来て、畑仕事をしてくれたんですよ!学校の畑でふるさとの味を知った彼らは将来、世界中のどこにいてもその味を忘れないでしょう。

佐藤:余蒔きゅうりはおいしいので僕も作っています。露地栽培で価格も安定しているため、生産者にとっても収益が期待できる作物ですよ。

横田:生産者のおかげで、会津伝統野菜を料理人へ安定して提供できます。

―会津伝統野菜を育て、食べた子供たちは、自分の足元にすごい宝があると気づくわけですね。

横田:私も会津生まれなので、毎年秋になるとクルミを収穫し、12月のクルミ餅作りを手伝っていました。今なお暮らしの中に、自然の恵みを味わう郷土料理があるのが会津の良さかもしれません。

長谷川:会津へ移住した写真家で「会津には、四季に自然の豊かさを加えて“五季”ある」と言った人がいますね。

横田:会津を訪れた人は「米は旨いわ、野菜は旨いわ、酒は旨いわ、会津は何ですか!」と驚きます。

長谷川:最近は、嬉しいことに若い農家がどんどん増殖しています(笑)。

根本:地元に若い生産者がいるのは料理人としてもうれしいです。


田代:小林君のように、先輩たちがプライドをもって農業に取り組む背中を見て、就農したいと思うのは心強いね。ふるさとの気候風土を活かした野菜つくりに取り組む姿勢も素晴らしい。

横田:ここ会津には、生産者と料理人の距離が近くて、互いに顔が見える環境がある。料理人は、福島の食材を料理に昇華させ食べ手に届ける。食べ手の「おいしい」という言葉は、作り手(生産者や料理人)にやり甲斐を与えてくれます。

田代:米も野菜も酒も丹精込めて作った方の思いが詰まっていますからね。土地ならではの食を堪能できる福島は、私にとって自慢の故郷です。




◎青山「ラ・ブランシュ」
東京都渋谷区渋谷2-3-1 青山ポニーハイム2F
☎03-3499-0824
12:00~13:30 LO、18:00~20:00 LO
火・水休

◎会津東山温泉 原瀧
福島県会津若松市東山湯本235
☎0242-26-4126
https://www.yumeguri.co.jp/

◎会津東山温泉 今昔亭
福島県会津若松市東山町湯本247
☎0242-26-4126
https://konjakutei.yumeguri.co.jp/

◎レイクビュー猪苗代荘
福島県耶麻郡猪苗代町葉山7105
☎0242-62-4511
https://lakeview.yumeguri.co.jp/

◎特定非営利活動法人 素材広場
http://sozaihiroba.net/

◎忠藤農業株式会社
福島県会津若松市神指町西城戸37


◎ふくしまプライド。
https://fukushima-pride.com/




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