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JOURNAL / JAPAN

日本[茨城]

見られてもいい豚舎が、誇りを醸成する。

風土が伝わる「常陸の輝き」の食べ方、伝え方 2021

Nov 15, 2021

【PROMOTION】
text by Saori Bada / photographs by Hiyori Ikai , Hide Urabe

緑濃い森を抱く美しい姿から「西の富士、東の筑波」と謳われてきた筑波山。その麓に広がる茨城県石岡市は、温暖な気候に恵まれた肥沃な土地柄で、農業だけでなく養豚や酪農など畜産業も盛んです。そんな石岡市で、ほんのり甘く、きめ細やかな身質と軽やかな脂身をもつ茨城県の新しい銘柄豚「常陸の輝き」を育てる牧場を訪ねました。都内3人のシェフとその魅力が伝わる調理法を考えます。

「常陸の輝き」とは、2018 年から販売が開始された茨城県の新しい銘柄豚。茨城県畜産センター養豚研究所で開発した肉質に優れたデュロック種の種豚「ローズD-1」を交配して生産した三元豚で、「常陸の輝き生産マニュアル」に基づき、専用飼料を与えるなど、生産方法や品質規格の条件を満たしたもの。

目次






いつ、どこを見られてもいい豚舎

現地を旅したのは六本木のフランス料理店「ル・ブルギニオン」菊地美升(きくち・よしなる)シェフ。

茨城県南部に位置する石岡市。

10月初旬、実りの季節。菊地美升シェフは茨城を訪ねるのは今回が初めて。
「茨城って東京から近いですね。電車で1時間、あっという間でした。車窓からの眺めも、稲穂が美しい金色の田んぼや緑の畑がずっと続いていて、農業の盛んな土地なんだなぁって」
目指す「武熊(たけくま)牧場」は、田畑や林に囲まれた静かな場所にある。筑波山が目前に広がり、空気がきれいで気持ちがいい。代表の武熊俊明さんは、妻の浩美さん、3代目となる息子の真史さんとともに、技能実習生なども受け入れながら牧場を経営している。

武熊牧場代表の武熊俊明さん。

「37年前に両親から事業を引き継ぎ、私で2代目です。継いだ当時から、どうしたら健康で肉質の良い、おいしい豚を育てられるかを毎日追求しています」
そのために、牧場の仕組みを見直すところから始めた。「良い豚を育てるには、まずは出産する母豚の体調管理が大事。さらに、生まれた子豚にストレスを与えず育てていくことも重要。だから種付けから出産、飼育、出荷までを一貫して見届けられる体制に切り替えました」。現在母豚は150頭で年間3500頭ほどを出荷しているが、母豚1頭につき年間20頭以上を元気に生み育てられているというのは、親も子も健康な証拠。飼育環境がいいという証といえる。


豚舎は、豚の成長過程に合わせて空調の管理をする。

子豚の胴体の長さや肉付きで、その後の成長具合を予測できる、と武熊さん。

父親となるデュロック種の系統豚「ローズD-1」の雄豚。赤身に脂肪分を多く含ませる能力がある。


乳酸菌で整える腸内環境

武熊さんの豚舎は管理が行き届き、外も中も特有のにおいが全くといっていいほどしない。
「その一番の理由は、衛生管理は当然のこと、実は餌にあります。人間も同じですが、排泄物の臭いは、体調や食べているものの内容で大きく変わる。生き物の健康は、腸の環境を整えることが重要で、うちではとくに、餌に加えている乳酸菌の質に気をつけます。
子豚と成長した豚に与える乳酸菌は同じではありません。乳酸菌にも様々な種類があり、選び方次第で肉の味も変わります。子豚用の餌は成分や甘味も成長に合わせて変えています。 面白いもので、 甘すぎると最初だけで飽きられてしまい、 餌をしっかり食べてくれなくなります」。武熊さんは、今でも月に1度はシンプルに焼いて、味を確かめている。

母豚に餌を与える3代目の武熊真史さん。

肥育後期、 出荷前55 日以上は 「常陸の輝き専用飼料」 を与える。脂の締まりがぐっと良くなる。


育て方に悩んだら、自分におきかえる

武熊さんが豚について話すとき、その目線はとても優しい。まるで人を見つめる目のようだ。
「豚も人間も同じ生きもの。育て方に迷ったら、自分だったらどうして欲しいだろうと考えるんです。たとえば、子豚は成長に合わせて約1カ月おきに隣の豚舎に移動させますが、周りにいつも一緒に過ごす仲間がいれば落ち着くから、兄弟姉妹チームはそのままで育てます。移動も、無理に急かして運ぶよりも、誘い出すようにして先導する。そうすれば自ら積極的に動いてくれて、余計なストレスもかからない」

子豚は寒いのも暑いのも苦手で体調を崩しやすい。だから子豚の部屋には一部床暖房を入れて体調を管理し、逆に暑いときには水を撒いたり換気をして、涼を呼ぶようにしている。「風通しがよければ空気も循環し、快適に過ごせる。気持ちよく暮らし、元気に育ってくれるように工夫しています」

生後間もない子豚は母豚と同じゲージで過ごす。1度の分娩で約10頭の子豚が生まれる。


地元に愛される、循環システム

武熊さんの生育環境への配慮は、20年以上前から使用している排泄物処理施設にも現れている。
「排泄物をどう処理するかは、畜産業の大きな課題です。うちではかなり早くから最新の技術と施設を牧場内に導入し、環境を整えました」。排泄物は、豚舎の床下で、液体と固形物に分ける。海水を真水に濾過する中空糸膜(ちゅうくうしまく)を使って濾過し、蒸散処理。固形物は縦型コンポストで、撹拌・発酵処理と粉砕を施して堆肥化、3割は近隣農家に無償配布し、7割は肥料メーカーへ卸している。

排気も脱臭槽を経て排出するので全く臭わない。牧場を常に清潔に保つことは健康な豚の生育にも欠かせないし、また近隣への配慮でもある。「この土地で長く続けていくためには、周りの方の立場に立って判断し、理解をいただくことも大切です。何より、自分たちが育てているのは人が食べるもの。だからその場所は、誰がいつ見ても清潔で、安心できるようにしておきたいのです」

誇らしげにそびえ立つ、縦型コンポスト。近隣住民からの臭気の苦情は全くない。

中空糸膜。ストロー状の膜で、家庭用浄水器から産業用まで液体に含まれる不純物の除去などに用いられる。

こうして丹精込めて育てた「常陸の輝き」の味には、どんな特徴があるのだろう。
牧場見学の前に、あらかじめロース、肩ロース、ヒレ、バラの各部位を試食していた菊地シェフは「肉にはしっかりした旨味があり、肉質も緻密でやわらか。そして何より、脂の甘味とさらっとした口溶けの良さが印象的でした。脂、軽くてなめらかですよね」と感想を伝えると、武熊さんは「豚の質の見極めの一つに、脂のつき方があるんです。皮の下の脂は外側と内側の二層になっていますが、ここにできるだけ質の差がでないと口当たりもいい。うちでは脂のキメの細かさが同じになるように餌を配合し育てているので、包丁を入れたときに、脂にもすっと刃が入るはずです」と、菊地シェフの感想を喜んだ。

農場の繁殖成績、飼料の給与量、出荷豚の格付けなど、日々の記帳を欠かさない武熊さん。「肥育期間を長めにとると、味が良くなるんです」と探求心も旺盛だ。

「私達生産者は、自分で作っているものは自分が一番よくわかっています。これだけ手を掛け大切に育てている豚だから、いいものを作っているという自負があるし、みなさんにおいしく食べていただけるという自信があります。食べたら絶対分かっていただけると思って育てているんです」

武熊さんの案内で牧場をくまなく見学した菊地シェフは、豚肉の味の良さの理由が、武熊さんの想いと日々の仕事にあると納得。何より、おいしさを追求し続ける姿に感銘を受けた。「いいものの裏側にある人の努力を目の当たりにして、自分の仕事を振り返るいい機会になりました」


ふわり軽やかな脂身を、クリスピーな食感で挟む/「ル・ブルギニオン」菊地美升シェフの伝え方

東京のキッチンに戻り、菊地シェフが選んだのはバラ肉。ハムとリエットの2種に仕立て、旬の柿やレンコンなどと組み合わせ、軽やかな前菜に盛り込んだ。
「まずはこの脂を味わっていただきたくて、バラ肉をハムにしました。甘い脂のふわっとした口溶けと、しっとりした肉の旨味の両方を同時に楽しめます」

「脂身の甘さ、軽さを伝えたい」と菊地シェフ。

ハムは、バラ肉を岩塩、クローブ、ハチミツ、コショウなどを加えたソミュール液に1日漬け、65℃で1時間20分ほど火入れし、極薄切りにスライス。添えたのは2種類の食べるソース。柿のみじん切りにミント、レモン汁、水切りヨーグルトを和えた爽やかなソースと、豚足とエシャロットのみじん切りに赤ワインビネガーとオイルを和えたソースだ。

一方リエットは、軽く塩を振ったバラ肉をラードと白ワイン、タイム、ローリエ、香味野菜とともにじっくり煮てから、叩いてなめらかに練り上げた。
「オリーブ油で香ばしく焼いた小さなトーストにリエットをたっぷり挟み、クリスピーな食感と豚の濃厚なコクをコンパクトに味わえます。ひと皿で、豚肉の魅力を多面的に楽しめるよう意識しました。フレンチならではの豚肉の楽しみ方の提案です」

パンは4ミリ幅にスライスしてトーストに。口当たりのよいリエットはたっぷり挟む。

「茨城県産『常陸の輝き』 バラ肉のコンポジション」

最後に菊地シェフは、あらためて牧場を訪ねた感想をこう語った。
「同じ素材を手にしても、生産者の思いや育てられている現場を知ることで、料理人のモチベーションも違う。素晴らしい生産者の素材を一人でも多くの人に伝えるためにも、良いレシピを考えたいです。武熊さんにも、ぜひこの料理を食べていただきたい」


ル・ブルギニオン
東京都港区西麻布3-3-1
☎03-5772-6244
11:30~14:30(13:00LO)
17:30~23:00(20:00LO)
水曜、第2火曜休

▶フェア期間
2021年11月15日(月)~12月14日(火)の間、「茨城県産『常陸の輝き』 バラ肉のコンポジション」5280円(税込)をランチプリフィクスコースの1品として提供。


塊の赤身肉に、3日かけて味と火を入れる/「ラ・トラットリアッチャ」河合鉄兵シェフの伝え方

メインから前菜まで、あの手この手で豚肉を食べ尽くす豚っ食いの国、イタリア。中でもとりわけ豚肉をよく食べるトスカーナ州で13年修業を積んだ、東京・広尾「ラ・トラットリアッチャ」河合鉄兵シェフ。「僕の修業したシエナの店ではシエナのブランド黒豚、チンタセネーゼを半頭買いしていました」。ちょうど今も豚肉の煮込み用にと、山ブドウを発酵させている最中だという。

「常陸の輝き」の試作では、フィレ肉をコンフィに、モモ肉は野菜のブロードで煮たオイル漬け(トンノデルキャンティ)に、そして肩ロースは香草で蒸し焼きにしたアローストにと、焼き、蒸し、茹でと様々なアプローチで味わいをチェック。中でも仕上がりがひと味違ったのはロース肉を使った加熱ハム「ロンバータコッタ」だという。

「赤身のキメ細かさが秀逸ですね。特にロース肉は脂の入り具合もちょうどよく、赤身部分がきちんとまとまっていて使いやすい。個性を伝えるならここかなと」

まず塊のロース肉の余分な脂をトリミングし、甘めの中粗塩を2%すりこむ。続いて粗挽き黒コショウ、ローズマリー、セージ、ニンニクのみじん切りを揉み込み、真空に。そのまま冷蔵で2日間寝かせる。火入れは低温調理だ。68℃の湯で16時間加熱。引き上げてそのまま1日以上おき、生ハム用のスライサーでごく薄く切って盛り付ける。

塊のロース肉は紐で縛ってから塩、ハーブ類を揉みこむ。

仕上げにオリーブ油ひと回しと黒コショウを振る。

仕上がりはしっとり舌に吸い付くようなしなやかさで、するすると喉を通る心地よさ。
「真空にして2日間、加熱後も1日おくから完成までに時間はかかりますが、その分しっとりと隅々まで味が入り、馴染みます。やはり同じ赤身部分のフィレを使ったコンフィも良い仕上がりになりました。同じように低温で火を通しても、ここまでの舌触りに仕上がるのは、この豚ならではのポテンシャルでしょう」


ラ・トラットリアッチャ
東京都港区南麻布4-2-49 麻布サンパレス203号
☎03-6874-3637
12:00~14:30
18:00~23:00
日曜休

▶フェア期間
2021年11月15日(月)~12月14日(火)の間、「『常陸の輝き』のロンバータコッタ」1900円(税込)をアラカルトで提供。


赤身のヒレをバターで香らせ、海の味と/「クラージュ」古屋聖良シェフの伝え方

東京・麻布十番「クラージュ」のシェフ古屋聖良さんは、30歳以下の若手料理人世界一を決める大会「サンペレグリノ ヤングシェフ2016」で日本代表に選ばれた実力の持ち主。熾烈な世界大会を前に徹底的な試作を繰り返す中、日本を代表するシェフの指導やアドバイスを受けて、料理への意識が大きく変わったという。
「食材の組み合わせ方やあしらいの繊細さなど、日本人ならではの個性や感性をもっと大事にしたいと思うようになりました」

選んだのは、赤身のヒレ肉。小さなポーションで皿数の多いコースの中で出すため、さっぱりと食べてもらえる軽めの料理をイメージした。
「『常陸の輝き』はどの部位も旨味が強く、肉質もやわらかい。中でもヒレはさらにキメが細かく、しっとりみずみずしいと感じました」

ヒレ肉は63℃で40分真空調理し、表面をバター、タイムでしっかり香り付け、休ませる。ソースはヒレのジュに生クリーム、サフラン、バターでコクを出し、クスクスを加えて肉に絡みやすく。仕上げにからすみパウダーで海の塩気と旨味を乗せ、爽やかなタイムを香りのアクセントに。豚肉の上品な味わいを引き立てつつ、サフランやからすみの黄色が目にも鮮やかなひと皿になった。

ヒレ肉に火が入りすぎないように、バターはアロゼしながら香りづけする。

「『常陸の輝き』 フィレ肉のポワレ サフランソース」

「今回は9皿からなる店のコースの中の1皿として考えましたが、同じヒレでもアラカルトなら違ってきます。生ハムやパンチェッタと組み合わせて豚のコクを重ねたり、きのこなど秋の食材のグリルを添えて風味や香ばしさを加えたり、あるいはロースをミンチにして、フリットにしても面白いかもしれません。肉も脂も旨味が濃く、アイデアを刺激される質の高い豚肉です」


クラージュ
東京都港区麻布十番2-7-14 azabu275 1F
☎03-6809-5533
17:30~23:00(22:15LO)
日曜、祝日休、不定休

▶フェア期間
2021年11月15日(月)~12月14日(火)の間、「『常陸の輝き』 フィレ肉のポワレ サフランソース」を16500円(税込)のコースの1品として提供。


しっとりとした繊細な身質、上品なコクがある赤身、ほんのり甘い脂身・・・シェフの技術で特徴的な個性をしっかり引き出された「常陸の輝き」のメニュー3品。
期間中、すべて制覇してみるのも、おすすめです。


◎武熊牧場
☎0299-43-0147

【問い合わせ先】
茨城県営業戦略部販売流通課
茨城県水戸市笠原町978-6
☎ 029-301-3966

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