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JOURNAL / WORLD

America [Los Angeles]

農業を通して祖国の文化を継承 “アイデンティティ・ファーミング”

Oct 11, 2021

text by Kuniko Yasutake

米国の一般的な日本料理店で天ぷら料理をオーダーすると、ブロッコリーやオレンジ色のサツマイモがエビと共に供されることが多い。日本人に限らずアジア系移民たちは代々、故郷の味を再現したいと思っても、このように北米で手に入る食材で間に合わすことを強いられてきた。今、それに待ったをかけているのが「アイデンティティ・ファーミング(Identity Farming)」と呼ばれる試みだ。

自らの人種・民族的背景に焦点を当て、先祖が慣れ親しんだ野菜や農法を保存し、各々のアイデンティティを再認識しようという理念が基になっている。それを牽引しているのが、白人食文化への同化に疑問を唱える若い世代の新しいアジア系農家だ。地域の移民コミュニティやアジア系シェフからの賛同もあって、その数は年々着実に増加傾向にある。2017年、米国農務省実施の農業国勢調査*では、アジア系の農業事業主は全米の0.7%に過ぎないが、耕地面積は白人の大規模農場に及ばずとも収入が全米平均を上回るケースがあることが指摘されている。

「アジア・パシフィック・アイランダー・フォワード・ムーブメント(Asia Pacific Islander Forward Movement)」は、ロサンジェルス郡の様々な東南・東アジア系コミュニティを支援する非営利団体。彼らは独自の「フード・ルーツ(Food Roots)」プログラムを通して、アジア野菜の市場定着を担う農民ネットワークづくりに加え、経済的かつサステナブルなアジア移民の食生活をサポートしてきた。コロナ禍の現在は、高齢者や低所得世帯と農家、両方の救済を目指す野菜緊急供給サービスも開始。アジア野菜を一過性のブームにさせない草の根の努力を続けている。

*2017 Census of Agriculture Highlights: Asian Producers
https://www.nass.usda.gov/Publications/Highlights/2019/2017Census_Asian_Producers.pdf

(写真)#feedthefamを意訳すると「家族に栄養」。料理を介して食卓で語り継がれる家族の歴史は文化の伝承となり、人々の心と体を養う――というメッセージも。



◎Asia Pacific Islander Forward Movement
https://www.apifm.org/foodroots/

*1ドル=110円(2021年9月時点)

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