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JOURNAL / WORLD

England [London]

刑余者の自立を支援する刑務所内のコーヒーロースター

Nov 22, 2021

text by Yuka Hasegawa / photograph by Redemption Roasters

フェアトレードの理念、再利用や生分解可能なコーヒーカップの導入など、サステナブルな姿勢が一般的となりつつある昨今のコーヒー業界。さらにカーボン・オフセットに取り組んだり、チャリティ団体と連携してプロジェクトを興す企業が台頭するなど、エシカルな動きは一向に衰える様子がない。そんな中、英国の刑務所内に独自の焙煎所と受刑者向けのコーヒーの教育プログラム「バリスタ養成講座」を設立した、「レデンプション・ロースターズ(Redemption Roasters)」が話題だ。

この斬新な発想が生まれたきっかけは、卸売のコーヒーブランドを所有していたマックス・デュビエル氏とテッド・ロスナー氏が、刑務所内で受刑者向けの新たなリハビリ教育プログラムを模索していた司法省の関係者と出会ったことだという。

英国において、刑務所出所後1年以内に職を得られるのは17%程度*1、特別な技能を持っていなければ再犯率は50%も増加するとの統計が示されている中*2、2017年、所内に焙煎所を設立し、バリスタの技術と知識を学ぶコースをスタート。受講生は出所後、現在ロンドンに8店舗を構える直営のコーヒーショップ、もしくは他の店で雇用の機会が得られるようなサポートを受けられる。

「受刑者を雇用することで、安価な労働力を得ているのだろうと思われがちですが、実は所内に焙煎所を設立し稼働させるには、コストがとてもかかる。とはいえ、社会によい影響を与えるソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)を構築したと自負しています。人々は単に私たちのコーヒーを飲むだけではなく、ブランドの価値観に賛同して選んでくれているだと思う」とデュビエル氏は語る。

2020年の長期にわたるロックダウンで、3カ所の刑務所内で運営されていたバリスタ養成講座は一時休止を強いられている。しかし、若い刑余者などに向けてロンドンにトレーニングスペースを開設したという。レデンプション・ロースターズの新たな挑戦がまた始まったようだ。

*1 司法省公式サイトより
*2 Redemption Roastersのプレスリリースより

(写真1)東ロンドン、ハックニー地区にオープンしたトレーニングスペースにて、ラテアートのレクチャー風景。刑余者や再犯のリスクが高いと思われる若者、失業者などを対象に、トレーニングを提供している。



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