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PEOPLE / クリエイター・インタビュー

みうらじゅん イラストレーターなど

Mar 01, 2017

text by Takeaki Kikuchi
photograph by Hiroaki Ishii
『料理通信』2013年11月号掲載

「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた」というフレーズで始まる『週刊文春』の人気連載「人生エロエロ」。
「世の中、エロスはOKなのに、エロはNGなんだよね」で、付けたタイトルが前述の通り。1個がだめなら2個でどうだ、というわけか?
ブームの火種を作りながら、ブームには興味がない。とことんオタク、なのに時代とリンクする。その秘密が明らかに──。

イカ好き。

東京・新宿区にあるみうらじゅんさんの事務所には、膨大な量のスクラップブックが置かれている。仏像、怪獣、エロに関する資料を蒐集し、貼っているのである。

「小学校の頃からです。切り抜きがたまると、年に1回くらい、おかんかおとんが『捨ててもいいか?』と訊く。で、〝作品〞にしてしまえば捨てられずに残せると思って、スクラップするようにしたんです」

エロ資料だけは貼らずにしまっていたところ、高校の頃に親に見つかり、風呂釜にくべる羽目になった。それを反省し、大学進学を機に蒐集を再開したエロ資料もきちんと貼ることに。 「雨の日も風の日も嵐の日も貼ってきました。大地震の日も貼ってましたね。地方に行く時は、スクラップブックと糊を持って行きます。コクヨの『ラ‐40』に貼るんです。エロは、34年間で366巻までいきました。この前、コクヨの人がインタビューに来ましたよ。こんなに使っている人はいないって。400巻になったら、それを広げて撮影したい。全巻を1枚の写真に収めるには空撮しかなさそうですが」

これはもうエロの求道者と言わずしてなんと言おう。仏像への興味の持ち方も人並み外れている。今秋の「国宝 興福寺仏頭展」でスポークスマンを依頼されるほど造詣が深い。しかし、過去には、仏像好きが災いして生まれて初めてのデートに失敗するという経験もあった。

「高校時代、友だちに女の子を紹介されて東寺に誘ったんですよ。そこで仏像について熱く語っていたら、彼女が『もう帰っていいかな』って。これはやばいと思って、仏像を止めようとしたこともあります」
止めてどうしたかと言えば、吉田拓郎になることにした。女子にもてるには歌だろう、と。
もてたいから始めた弾き語りだったが、求道者ゆえにのめり込み過ぎてしまう。高校卒業までに自作した歌の数、400曲以上。吹き込んだカセットを友人に次々と送りつけ、「気持ち悪い」と言われる始末。

ゆるキャラの魅力とは?

みうらさんはエロや仏像といった時代を超えた対象物に固執する一方で、ゆるキャラ、マイブーム、熟女、壇蜜、海女などの魅力にいち早く気づき、発信を繰り返すことで流行を創り出してきた。「ゆるキャラ」「マイブーム」という言葉は、みうらさんの命名だ。

「後楽園遊園地でゆるキャラショーを初めてやったのは、11 年前。当時の彼らは誰からも注目されず、所在なさげにボーっと立っていた。そこが面白いと思ってね。お役所の担当者が2人くらいで会議をして決めたみたいな雰囲気がいいんですよ。次の年は東京ドームで、70体くらい集めてやりました。どうせやるならオリンピックスタイルでやろうと、ステージの真ん中に聖火台を組んで、入場行進して1体ずつ登壇するというショーにしたんです。彼ら、動きが遅いから、全部が入場するだけで1時間半もかかって、会場はザワついてましたね(笑)」

ゆるキャラの魅力を人々に知ってもらおうと、週刊誌『SPA!』で、各地のゆるキャラを紹介する連載を始めた。当時のゆるキャラは性別や得意分野といった個性が確立されていなかったため、先方から許可を得て、みうらさんが考案したという。手間暇かかる作業を続けて毎週掲載した執着心にはもう感服するばかり。

そこまでしてブームを作ったにも関わらず、近年登場する計算され尽したゆるキャラにはあまり魅力を感じない。「街でくまモンを見かけても、写真を撮ろうとは思わないですね」と言う。「きっと流行ものが苦手なんですよ」。

マイブームは尿瓶

仏像にせよ、ゆるキャラにせよ、みうらさんに流行らせようなんて気はこれっぽちもない。
「子供の頃に妙に気になっていたものを急に思い出し、改めてその魅力に気づくことがあるんです。昔蒔いた種が、何十年か経って芽が出るような感じです」

意図せずして時代を牽引し続けるみうらさんの今のマイブームは、なんと尿瓶だ。
「団塊の世代が年をとった。彼らが行くようなコンサートでは、トイレが近いは、男の年寄りのションベンは長いはで、トイレに行くとなかなか席に戻れなくなっちゃうんです。だから、かっこいい尿瓶が出たら、流行るんじゃないかなと思って。ローリングストーンズのコンサートに行く時は、口のところがあのベロ出し唇になっている尿瓶とか(笑)。この前、アルゼンチン製の尿瓶を買ったら、口が長い。男性器に比例しているわけ。実際に集めてみると、いろいろなことがわかってくるので面白いですよ」

みうらさんは、1時間余りのインタビュー中、絶え間なく語り続けた。空白を作るまいとするかのような姿勢は、スクラップブックを埋め尽くす性格とどこか通じるようでもあった。

みうらじゅん
1958年京都府生まれ。武蔵野美術大学在学中にデビューした。82年、ちばてつや賞を受賞。97年に「マイブーム」で流行語大賞に入賞し、授賞式では「郵政3事業」の小泉純一郎厚相(当時)の隣の席に座り、小泉氏から「じゅん・じゅんコンビだね」と話しかけられた。

 

本記事は、「EATING WITH CREATIVITY」をキャッチフレーズとする雑誌『料理通信』において、各界の第一線で活躍するクリエイターを取材した連載「クリエイター・インタビュー」からご紹介しています。テーマは「トップクリエイションには共通するものがある」。

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