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PEOPLE / 寄稿者連載

暮らしを創る、「家」づくりのお話

東野華南子さん連載 「暮らしを創る、店づくり ―いい空間て、なんだろう― 」第4回 

Dec 14, 2020

PEOPLE / LIFE INNOVATOR

店づくりを軸にした紹介をされることが多いリビセンですが、実は今、お家のデザインもしています。
産休で私自身が店づくりから少し離れてしまっているので、
今回はちょっと産休中にトライアンドエラーした家づくりの話を。
お店って、オーナーがいちばん長い時間を過ごす場所だから、
そのひとが一番気持ちよく過ごせる場所をつくりたい。
オーナーの働きや暮らしを支えられる空間をつくることで、いいお店はできていく。
そう思って店づくりをしてきましたが、どうやら家は家で大切っぽいぞ、と気づいたお話です。


むちゃくちゃなまま始まった、あたらしい家

ずっと店づくりをしてきた私たち自身が、
中古住宅を購入して高断熱高気密の住宅にリノベーションしたのは2年前のこと。

それまで、3カ月ごとに暮らしの拠点を変えたり、借りぐらしばかりだった私達は、
「普通の家に普通に暮らすこと」をイメージするのがむずかしくて、
いろいろ中途半端なまま暮らし始めました。
古いタンスの引き出しを抜いたものを食器棚や靴箱にしたり、
大きな木箱にちゃぶ台をのせてダイニングテーブルのように使ったり、
それはそれで面白かったけれど、もうめちゃくちゃでした。


引越し当時の我が家。まだ、開梱も終わってないので物が少ない。


とにかく仕事が楽しくてほとんど家にいなかった私が、
出産で家にいる時間も長くなって知ったのは、
家も店も、日々手を入れ続けていくことが大事なんだなぁ、ということ。
そして、快適って努力が必要なんだなぁ……ということ。

例えば家だと、家族が増えたり減ったりすれば、
毎日のタイムスケジュール、つくる料理、洗濯物の種類、
区切りとなる時間が変わり、生活の仕様が変わる。

仕様が変われば、仕組みも変える必要がある。
つわり~出産、子育てスタート……。
ダイニングテーブルとその周りの配置も、
キッチン周りの配置も、もう10回は変えました。

自分の暮らしに必要な仕組みをその都度発明していく。
発明なんてたいそうなことはしていないのだけれど、
飽きっぽさが相まって、小さな変化を生み出していくなかで、
「めちゃ便利になった……!」と感じた瞬間の喜びは、
発明、と呼びたくなるほど大きい。

キッチンで料理中に腰掛けるハイスツールが欲しくて、リビセンにて鉄足と羽釜の蓋を購入して制作中。


手を入れながら、暮らしていく
(でもできればその頻度は少なく)

家も店も、発明するには、まずは自分を知ること。
何に時間をかけることが苦じゃなくて、何が辛いのか。
それ自体が辛いのか、状況によるものなのか。
大変な時って、思考もままならないから大変なのだけれど、
少しの時間を見つけたら手を動かしてタスクをこなすより、
立ち止まって発明が必要なことが、私は多い気がします。

お店をつくっていた時に「どう働く?どう生きていく?」と、
「はたらき」を真ん中においてお施主さんと向き合っていたように、
仕事としての家づくりは、「どう暮らしていく?生きていく?」と、問いは少し違えど、やっぱり同じ。
働く、暮らす、癒やす。そのためにどうしたらいいか? を知るには、まず自分を知ること。

でも、夫婦や家族の関係性、家事の分担、バランスの保ち方、過ごし方……、
家は自分ひとりだけのものじゃなく、それぞれの生態系があって、それがまた難しい。
そういった意味で、本人たちにしか知りえないことがより多いから、
家づくりは私達にお手伝いできることって限られているんだなぁ、と、
夫と暮らし方を話し合い、何度もすれ違いながら改めて気づきます。
こんなに一緒に暮らしていても、まだまだ知らない小さなこだわりは出てくる出てくる。

だから、暮らしながら、手を入れていける。発明していける。
家を引き渡された時に、そう思えるたくましさを、店づくりをしているときと同じ様に、
家づくりを任せてくれたお施主さんに渡したいなと、改めて思いました。
それが、自分の生活の変化を通して、改めて気づいたことでした。


最近の我が家のダイニング。引越し当時はなかった食器棚はついたけど、相変わらずダイニングテーブルは仮のまま。暮らしかたをまだまだいろいろ試しているところ。


暮らし辛さ、働き辛さの原因を探る力を。
どうやったら不便を解消できるか考える力を。
実行するために調べる力と技術を。
そして、どうにも困った時には声をかけてもらえる関係性を。
店づくりと同じように、お施主さんにお渡しできればいいな。

店舗のデザインも家のデザインも、
これからも変わらずそんなところを目指してやってきたいな、と、
そんな当たり前のことを、当たり前に思ったのでした。


日々の暮らしは頑張りたくないから、
頑張って発明したい

ちなみに私は最近、産後何度目かの感情の爆発があったのだけれど、原因は、
料理自体は大好きだけど、大人用と子供用それぞれ何を作るのかを、
いつお腹が減って泣き出すかわからない存在に脅かされながら作るのが辛い、でした。

それに気づいたのは、友人が主宰した料理教室に参加したおかげで、
最近ずっと考える度に悲しい気持ちになっていた料理が、やっぱり楽しくて幸せだった、ということ。

そうとわかったら、改善だ!と夫と相談して1日自由な時間をもらって環境づくりをすることに。
子連れの買い物が大変だから、一度にいろいろ買い込むけど、
日々、泣いてる子供を横目にどうにかごはんを作るから、
落ち着いてごはんを作れずに食材を見落とす。
見落としてしまうから、駄目になりそうな食材を料理したり、時には使えないまま腐らせたりする……。
そんな負のスパイラルを断ち切るために1日動いたら、そこから心身健やかな最近です。
食材やつくりおきを管理する仕組み、片付けやすくするための仕組み、食材調達の方法。
大したことはしてないのだけれど、日々を楽にするために何ができるかだけを、たくさん考えた。
それだけで子供とも心置きなく楽しめる時間をつくることができました。


子供が産まれて、キッズスペースができました。日々広がったり狭まったりしています。収納がないと散らかる!とわかったので、日々いい棚をリビセンで探しているところ。見つかるまでは、おもちゃの収納はひとまずタンスで。


子育てをしながらの家事や仕事は、想像していた100倍はキツイ。
心身の疲労は、ぎゅーぎゅーに詰めて仕事をしてた1日の終わりの、10倍は大きい。
それでも、仕事も家での時間も楽しみたい以上、
少しでも少ない負担で家での時間を気持ちよく楽しめる環境にするための発明が、
とにかく最優先事項のここ半年だったなぁ。
家での時間をたっぷり過ごすことで、店づくりの引き出しも増えたような気がします。
これからも発明していくために、いろんなお店に遊びにいって情報収集をする、
という趣味と実益を兼ねたライフワークをしていきたいなと思います。





東野 華南子(あずの・かなこ)
1986年埼玉生まれ。中央大学文学部を卒業し、カフェで店長、ゲストハウスでの女将経験を経て、2014年よりフリーランスデザイナーだった夫・東野唯史氏とともに「medicala」として空間デザインユニットとしての活動をスタートする。15年に新婚旅行で訪れたポートランドのDIYの聖地とも言われる古材住宅資材販売ショップ「ReBulding Center」に感銘を受け、名称の使用許可を得て、16年に同名にて店をオープン。代表取締役は唯史氏。リサイクルショップとしてだけではなく、「REBUILD NEW CULTURE」を信念に掲げ、捨てられていくものや忘れられていく文化を見つめ直し、人々の生活を再び豊かにする仕組みを作るチームを目指す。
http://rebuildingcenter.jp/





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